カカオ豆がチョコレートになるまでの驚きのストーリー

バニョスでチョコレート工場を見学して、チョコレートの深さに興味がそそられました。普段、何気なく口にする一粒のチョコレート、そこに至るまでの経緯をたどってみました。

クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種とは?

クリオロ種」は希少品種のカカオです。主に中南米で、エクアドルでも栽培されています。病害虫に弱いことから栽培がむずかしく、生産量は世界で栽培されているカカオのたった3〜5%程。ラグビーのような長細い形状と、白色から黄色、紫色、赤っぽい色をしています。

クリオロ種は、花のような華やかな香りがあり、苦味が少なく、甘味が強いのが特長です。つまり、この種から作るチョコレートは人気があり、高いお値段がつくことが多いです。

フォラステロ種」は、苦味が強く、黄色をしています。主に西アフリカや東南アジアで栽培されています。病害虫に強いため栽培しやすく、生産量は全体の約80%。主に大量生産のチョコレートに使用されます。

トリニタリオ種」は2つの種を掛け合わせたハイブリッド品種で、クリオロ種より栽培しやすく、品質にも優れています。中南米で主に栽培されています。生産量は全体の約15~20%です。

どこで栽培されているの?

西アフリカ、東南アジア、中南米などの高温多湿な地域で栽培されています。高温といっても強い直射日光は苦手なので、ほかの木を植えて日陰を作らなければなりません。単にカカオの木だけを植えればいいのではなく、周囲に他の木々も植えることのできる環境が必要になります。

カカオの幼木は3〜5年間のうちに成木になり15cm程もある大きな果実(カカオポッド)をつけます。

カカオパルプとは?

硬いカカオポッドを割ると、中には実(パルプ)と種があります。カカオパルプはカカオ豆の周りを覆っている白い果肉です。見た目は綿菓子のようで白くてヌルヌルとしています。これが、ライチやカルピスのような、甘酸っぱくて爽やかな良い香りがするのです。食べると、クリーミーでとっても美味しいです。

そしてこのカカオパルプが次の段階の発酵・熟成にとても重要な役割を果たします。

カカオ豆の発酵・熟成

カカオ豆をカカオパルプごと木箱に入れたり、バナナの葉で覆ったりして発酵させます。カカオパルプには水分や糖分が豊富に含まれるため微生物が活発に繁殖します。さらに熱帯の湿気と気温で発酵が進みます。約1週間程度かけて発酵・熟成をおこなっていきます。つまり、爽やかなフルーツの香りをまとったカカオパルプごと発酵、熟成させる事によって、あのチョコレートの芳醇な香り、甘味が引き出されるのですね。

乾燥、出荷

発酵・熟成が完了したら、乾燥させていきます。発酵しつづけて水分量が増えると、逆に腐敗してしまうので出荷前に乾燥させます。乾燥させたら、麻袋などに入れて出荷します。

ロースト

乾燥させたカカオ豆はそのまま食べられる訳ではありません。カカオ豆には薄いパリッとした皮がついているので、その皮を取り除きます。皮を取り除いてからローストする方法(ニブロースト法)と、皮をつけたまま丸ごとローストする方法(豆ロースト法)があります。

皮を取り除き、砕いてローストすると、熱が伝わりやすいという利点があります。一方、皮ごとローストするとカカオの香りを皮の中に閉じ込め、香りを逃さないという利点があります。約100から140度くらいの温度でローストされます。

コーヒー豆と同じように高温深煎りだとコクと苦味が深く、低温浅煎りだとカカオ豆特有の香りや味を強調した仕上がりになります。豆の特徴に合わせて、その良さを引き出すローストをする、職人の腕の見せ所ですね。

カカオニブ、カカオマスとは?

ローストされて皮を取り除かれたカカオ豆が、カカオニブと呼ばれるものです。カカオニブを直接食べると、とても苦いです。カカオポリフェノールが6〜9%ほど含まれています。

このカカオニブをすり潰してドロドロのペースト状にします。それがカカオマスと呼ばれるものです。

ペースト状にしていく過程で、カカオバターがにじみ出てきます。カカオニブの55%がカカオバターです。このカカオバターはココア色でなく、ホワイトチョコレートそっくりの白色です。ちなみに、カカオバターを絞った後のカカオニブをパウダー状にしたのがココアパウダーです。

味の調整

ペースト状のカカオマスに、砂糖やバター、ミルクなどを加えて味を調整します。沢山ミルクや砂糖を入れると、ミルクチョコ、少しだとダークチョコになります。次に、それを20ミクロン以下になるよう微細化、つまり細かく砕くことで、チョコレートの舌触りがなめらかになります。エクアドルではこの微細化をしていないチョコが売られていて、食べるとカカオニブの塊が砂のようにジャリジャリします。素材はいいのに残念ながら美味しくありません。

その後、チョコレート生地を長時間練っていきます。これをコンチングといいます。練ることによって硬さがほぐれ、さらに口どけの良いチョコレートに仕上がります。さらに、ここで発酵の過程で発生した酢酸(酸っぱい成分)も蒸散し程よい酸味、苦味に調節します。

テンパリングとは?

チョコレートに行なう温度調節のことをテンパリングと言います。テンパリングを行うことでココアバターの結晶を安定化させ、艶のある口溶けの良いチョコレートを作ることができます。 カカオバターの中には融点(溶ける温度)の異なる6パターンの結晶構造があり、その中でもV型の結晶構造が理想的です。V型の結晶構造は融点が33℃程度で体温で溶ける温度です。温度調節をしながらこの結晶構造を作ることにより、常温では溶けず、口に入れたときに溶ける口溶けの良いチョコレートができあがります。

逆にテンパリングを失敗すると融点が下がり、常温でも溶けたり、油脂がチョコレート表面に浮いてきたりします。艶のない口溶けの悪いチョコレートになってしまいます。

最後にテンパリングをしたチョコレートを型に流し入れて冷やし固めます。これをモールディングといいます。

宝石のようなチョコレート、長い加工過程と職人の汗と苦労に思いを馳せながら味わってみて下さい。いつもの一粒がもっと味わい深い、特別の一粒になると良いですね。😊

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この記事を書いた人

日本の真裏に位置するエクアドル。その中でも標高2000mをこえるアンデスの田舎町に住んでいます。
カルチャーショックな出来事、南米の料理レシピ、観光情報などをお届けします

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